一藤木貴大君(以下貴)、お父さんの浩恭さん(以下父)とちょこっとお話

貴大君、覚えてる?

貴「はい、覚えてます。」

おお、マジで。うれしいなあ。2年前あったときより随分大きくなったように見えるけど、身長と体重は?

貴「174センチ、77キロです。」

77キロ!!カ〜〜いい体してるねえ。(ちなみに僕は175センチ,58キロ・・・見習ってトレーニングしなきゃ!)

腰を怪我してたけど、治ったの?

貴「はい、治りました。」

よかったよかった。そういえば、これからもジュニアには出ないって話だけど。

貴「はい。ずっとスペイン周辺のフューチャーズ(もちろん日本のフューチャーズとはレベルが違う)をまわって、ポイントを取ってチャレンジャー、グランプリと上がっていきたいです。」

なるほど。スペインのジュニアはあまり遠征に行かないもんね。国内のレベルが高いから、そこで揉まれ、這い上がれば世界で活躍できることは過去の実績が証明しているということだね。

貴「そうっす。」

ということは、貴大君みたいなジュニアランキングに名前のない子が沢山いるってことだ。世界は広いねえ。
全仏の放送でナダルが全仏ジュニアにもでていないことが取り上げられて、この時期に何をしていたんだ?という話になってたけど答えはこれだね。
そうそう、スペインに行こうとして試合の日程を調べたときに、毎週必ず国内にフューチャーズがあるのを見てびっくりしたよ。

父「夏の2週間とクリスマス以外では毎週必ずありますからね。チャレンジャーも多いですよ。」

か〜なるほど。うらやましいですね。しかし、この年代でこれだけ早いスイングをする選手は日本にはいないです。
写真を撮ろうとしてびっくりしました。インパクトにあわせていつものタイミングでシャッターをおすとフォロースルーが撮れてて(笑)。最初はタイミングに苦労しましたよ。サーブもちょっと貧弱な印象がありましたけど、速くなりましたねえ。軸がしっかりした印象があります。

父「そうですね。」

今、学校には行ってるんですか?

父「行ってないです。語学だけは習わせましたけど(注、彼が練習しているバルセロナにあるサンチェスカサルアカデミーには学習施設も充実している)。」

なるほど。貴大君のコーチは今誰がメインでやっているんですか?

父「ずっと私がコーチしてきたんですが、スペインに移ってからアンヘルやエミリオ、ヘルマンと協力しながらやっています。貴大は僕以外のコーチは初めてで、最初心を開かない部分があったんですが、今ではもう大丈夫です。良平(弟さん)は比較的早く慣れてくれました。」

イタリアへの移住、そしてスペイン、サンチェスでの練習・・・経済的にもそうとうきついでしょうね。

父「そうですね。特にサンチェスは国内で一番高いですよ。練習の環境だけで年間○百万かかります(ここでは一応伏せときます)。」

それにフューチャーズへの遠征費、宿泊費。良平君もいますしね。

父「今はスポンサーに援助していただいているので助かっています。」

試合についてはどうでした?

父「彼はほとんどレッドクレー主体で練習していますし、また肩口の高さのボールを叩く練習がほとんどですから弾まないオムニと茶圓君の低い弾道のボールではやりづらかったと思います。茶圓君はオムニに慣れているようでしたね。フットワークも上手かったです。」

そうですね。なんか地に足がついてないような感じがして、とてもやりづらいそうでした。

父「貴大もやりづらいといっていました。滑るところとすべらないところがあって、ちょっと怖いともいっていました(転んでケガするシーンもあり)。」

ふむふむ・・・・(そのほかにもいろいろ雑談)

貴大君、頑張ってね!!

 

今回、初めて彼の本番の試合を見た。

印象としては、練習と変わらず、全てのボールをハードヒットする。相手のファーストサーブだろうが左右に揺さぶられようが全てのボールに対して恐ろしく速いスイングスピードで打ち抜く姿は感動を覚える。つなぎのショットなどほとんど皆無である。

だからミスもあるがものすごいエースもある。茶圓プロのラケットをはじくシーンが何度も見られた。そのスイングスピードとボールの速さは明らかに国内レベルを超えている。

もちろんドロップショットやアングルショットも使う。ちょっと貧弱な印象もあったサーブはセット平均3本くらいのエースをとるようになっていたし、バックは以前よりものすごくしっかり打ち抜くようになっていた。

まだテニスはまとまっておらず、かなり荒いが(多分本人もコーチもまとめようとは思っていないであろう)、それがまた先を感じさせる一藤木貴大、16歳、日本のホープである。

必ずフレンチを獲らせます、と語る浩恭さんの言葉は夢物語には聞こえなかった。

 

2005年6月17日  草津にて

 

追加インタビュー ジャパンオープン 一藤木貴大インタビュー


どもども。忙しい中で協力ありがとう。

さて、試合の感想とかは腐るほど聞かれていると思うから、違う質問を。

まず、ブブカに勝ったりしたとはいえ、ほとんど公式戦での実績がないわけじゃない?
フューチャーズ本戦で勝ったのも、この前の草津が初めてだよね。

「はい。一度だけスペインで予選上がったことはあるんですけど、あとは全部予選で負けてます。」

ま、向こうのフューチャーズはレベル高いらしいからねえ。
しかしその中でこれだけマスコミに騒がれて、グランプリの本戦ワイルドカードをもらって、しかもセンターコートのナイトセッション!!この
待遇を自分ではどう思っているのかな??

「そうですね、期待してくれるのはありがたいし、すごいうれしいですね。ただ、スペインではただのペーペーのジュニアなんで、こっちに来ると正直なんでこんなに、という不思議な感じはありますね。」

だよねえ。出場するという話を聞いた時は予選だとおもったけど、本戦ワイルドカードと聞いたときはびっくりしたよ。

それから、今は全部ひたすら打ちまくる、というテニスをしているように思うんだけど、これからもこのまま行くつもり?

「いや、いつもはもうちょっとつないだり、色んなショットを打ったりするんですけど、今回は普通にラリーしていても絶対ポイントを取れないと思っていたので、全部打ちました。」

ケガもあったしね。あの状態だとやっぱりポイントを短くしようとなるかな。
そういえば茶圓さんの時はもうちょいラリーとか、つなぐボールがあったかな。でも、打ちまくってた印象が強いなあ(笑)。

「そうっすね。大体打ちます(笑)。でも、難しいとこにきたボールは攻められないようなところに返すようには意識しています。」

ところ変わって、普段の練習のスケジュールを教えてくれる?

「えっと、8時に起きて、朝食。10時から練習スタート、13時まで。15時まで休憩して(スペインではシエスタといって、ちょっと長めのお昼休みが国民に定着している)、15時〜18時30分までテニス、19時30分までトレーニングで終わりです。それから土曜日は午前中だけで、日曜日はオフです。」

そうそう、スペインに土曜に見学にいったら誰もやってなかったんでびっくり。日曜に行ったらまた誰もやってなかった・・・あれはへこんだなあ。大体どんな練習やってるの?

「球出し練習はやりますね。最近はポイント練習とか、ゲーム的な練習を多くやるようになりました。チャンスボールの球出しからの試合とか。」

ほえほえ。今後の予定は?

「まずケガを治すことに専念したいと思います。一度帰りますけど、日本に戻ってきて、ゆっくりしながらしっかり治したいですね。」

マヨルカだっけ?チャレンジャーの本戦ワイルドカードもらえるって聞いたけど。

「そうですね。でも、今回5ポイント頂いたんで、今はそこまでポイントとることに執着しなくてもいいかな、と思っています。やはり完治させることが先決ですね。」

そっか〜。お大事にね。最後に、これからの目標は?

「やはりグランドスラムで勝つ、というのが大きな目標ですね。」

おお〜なるほど。とりあえず聞きたかったことはこれくらいです。ありがとう。


 

父であり、コーチでもある浩恭さんにもインタビュー



ええと、貴大君が9歳の時にイタリアへ移住されたそうですが、その時期、そして多くのテニス強豪国がある中で何故イタリアを選ばれたのでしょうか?

「まず食事がおいしいことですね。そして、気候が温暖なこと、国民性が友好的であることが理由です。楽しそうでしたしねえ。
日本をベースに活動することを考えたとき、ツアーに出るときに初めて言語や生活習慣などの慣れない環境に入っていくことになりますから、大切な時にそういうことに時間を費やしてほしくない。早めに慣らすためのファーストステップとしてイタリアを選びました。ですから、そこまで深い考えもなかったです。もちろんテニスも一日8時間やっていましたが、それはニの次という感じでしたね。」

そして、スペインに移住された大きな理由は?

「貴大が自分で選んだんですよ。アメリカやドイツにも短期トレーニングに行って、最終的にスペインに決めました。」

(ここで、貴大君にスペインを選んだ理由を聞いとくの忘れました、俺のバカ〜)

では、彼のプレースタイルについてなんですが、今のところただ打ち抜くことに徹しているように見えて、つなぐ、かわす、緩急をつける、などのことをしていないように見えますが、これからもこの全部打つ、というスタイルを貫かれるのでしょうか?

「いや、ゲームプランに必要な様々な技術は彼は持っていますよ。ただ、それもまだまだ改善する必要がありますし、16歳ということもあり、体力面がゲームレベルには達していないので、不安になって何も考えずに全て打ってしまうことがあるんでしょうね。ですから今後、大きな課題はフィットネスです。自分の技術を生かしたゲームメイクができるようなフィットネスを身につけて、自信をもってプレーするようになってほしいと思います。」

ふむふむ。

では、お話を変えて、日本のジュニアテニスについてお伺いします。
浩恭さんは日本のジュニアテニスの現状についてどう思われますか?

「まずとにかくジュニア時代のタイトルを非常に権威化する傾向がありますね。インターハイ優勝、全日本ジュニアで優勝、それで完結してしまう。テニスは国内で完結できるスポーツではありませんから、そこからが大切にもかかわらず、ジュニア時代の成績だけを重視しすぎていて、その場その場のことしか考えないテニスになりがちです。

たとえばヤーリ・ナタリという選手は、レベルの高いヨーロッパのジュニアトーナメント(ETA)を1年間回って、ほぼ無敗でした。
しかし、今ではどこにいるの?というくらい名前を聞かなくなっています。
ジュニアが終わってからが本当の勝負なんですよ。
それから高いレベルでプレーし続けることができないのも問題ですね。ですから日本のジュニアのシステムはもっと変えていくべき点が多いと思います。」

しかし、移住もしくは単身でテニス修行にいくことができないほとんどのジュニアは、日本をベースにして現行のシステムの中で工夫しながら

頑張っていくしかないわけですが、そういう環境で選手が育つと思われますか?

「日本をベースにしても育つと思いますよ。
やはりそれには経験のある優秀なコーチが必要です。ですから、ジュニア育成もそうですが、コーチの育成が非常に大切になって来るでしょうね。
たとえば、協会の遠征に協会のコーチがついていってもどうしようもないでしょう。やはり普段接しているコーチ達と、チームで世界を回らなければいけないと思います。
もっと《選手チーム》の強化を進めていけばいいと思います。クラブに対して援助することが必要だと思いますよ。」

そうすると韓国なんかはサムスンという企業がジュニアチームを作って各国を遠征していますが(詳しくはヒョンテのインタビュー参照)、そういう方向にすべきだということでしょうか?

「あ、そうなんですか。ええ、それは非常にいいと思いますよ。」

なるほど。

それから、知り合いに子供をスペインにテニス修行に行かせたい、という人を何人か知っているのですが、そのほかにもテニス留学を考えてらっしゃる方は多いかと思います。そういう観点から客観的に見てサンチェスカサル・アカデミーをどう思いますか?

「まず、寮に入れるのが13歳からですから、それ以下は受け付けていませんね。
それから、環境がいいといわれますが、やはりスペインではスペイン人、もしくはスペイン語を喋る選手が非常に愛されていて、たとえば試合後のコーチのアドバイスにしても、スペイン人には非常に長く、綿密にアドバイスしますが、英語しかできない人にはチョロっと二言三言で終わらせます。ですから、タカもスペイン人よりはずっと悪い環境のなかでプレーしているわけです。ただし、日本よりはいいですよ。」

しかし言語に関しては向こうに行ってから身につけることはできないでしょうか?

「いや、テニスとスペイン語を完全にマスターさせる、というのを両立させるのは多分不可能ではないでしょうか。日常会話などはすぐにできても、言語が違うとティーチングをする上で細かな意味合いを含む言葉までの意味を理解できるわけではないので。」

なるほど。そのあたりの不自由はあるわけですね。しかし、その他に少数人数での練習(2面に3人〜4人くらいか)、レベルの高い経験豊富なコーチ陣、選手のレベルの高さなどのメリットがある、ということですね。

それでは、ヨーロッパに行かれて7年間、数え切れないほどの成功例と失敗例を目にされてきたかと思いますが、上に行く者とテニスをやめて行く者の差というのは浩恭さんはどこにあると感じられますか?

「やはり熱意ですね。世界に行く子はやはり気持ちが違います。
環境環境とみなさん言われますが、実際日本からは年間200人ほどの選手が海外のアカデミーへ行っているんですよ(そういえば僕が行ったときも10人近い日本人選手が練習していた)。しかし、なかなか花開かないですよね。確かに環境は大切ですが、それだけではないということです。

そして、選手の気持ちだけでなく、コーチ、そして周りの人間の気持ちも非常に大切です。
もう死んでもプロの世界に行く、という120%の、はたから見たらきちがいのような、狂った情熱を持った選手とコーチ,チームが揃えば、必ず世界のトップへ行けるんです。
そして自分で言うのもなんですが、僕はグランドスラムで勝てる選手を出したい、という気持ちでは日本で5本の指に入る情熱を持っていると思いますよ。
だから、貴大とこれからも頑張りたいですね。」

では、最後に浩恭さんの最終的な目標はなんでしょうか?

まず、今アカデミーを作っていますから、そこで2人を育てながら、いい選手とコーチを育てて行きたいですね。
そして、貴大には長くプレーしてほしいと思っています。少なくとも30まではやってほしいですね。それくらいやらないとお世話になった多くの人たちに恩返しができませんから(これは草津のときに聞いたお話)。
ヨーロッパではコンスタントにランキングを保つ、ということがとても重要視されているというか、ほかから認められる重要な要素のひとつなんです。ですからコレチャ、コスタなどはものすごい人気でしたね。逆にフェレロなんかはやや評価が低いです。ナダルも、向こうではまだ冷めたものですよ。ですからたとえば貴大がポッと大きい大会で優勝して消えてしまうよりも、TOP100に長くいてくれるほうがずっといいですね。」

忙しい中、ありがとうございました。また、お話聞かせてくださいね。


今回は残念な結果となりましたが、16歳、まだまだこれから。お父さんと同じく末永くプレーしてくれることを願っています。
果たして彼は地獄のスペインフューチャーズを勝ちあがってこれるでしょうか・・・・・、しばし待ちましょう。

 

2005年10月7日 有明にて


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